ツイート 乙姫の居室に参上した亀はそう言った。乙姫は、静かに笑った。 「亀よ、あなたが私のために尽くしてくれたからです」 「しかし、あなたを救うことはできませんでした」 「いいのです。そうしようとしてくれたことで、私は充分です」 亀は悄然として乙姫の部屋を出た。竜宮の門をくぐると外の海へと出て、そしてもう戻らなかった。 亀の背の甲が割れており、また海の上を漂い続けているのはこれ以来である。 9/9 前のページ 9月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5 6 7 8 9