小説

『ミスターブルーバードをさがして』村山あきら(『青い鳥』)

「ひとりぼっちの白雪姫」
 どうやらミスターブルーバードは白雪姫の元にいるとも思えませんでした。
 仕方なく、二人は小人さんたちに別れを告げて、再び幸せの青い鳥をさがす旅を始めました。
「自由ではないシンデレラの所にはいなかった」
「ひとりぼっちの白雪姫の所にもいなかった」
 ミスターブルーバードは、いったい何処にいるのでしょうか。
 その時でした。青い鳥が子供たちの前をサッと横切ったのです。
「ミスターブルーバードよ!」
「ミスターブルーバードだ!」
 千鶴たちは急いで鳥を追いかけます。
 ですが、二人が追いつくよりも先に、ブルーバードはいつの間にか現れた小さな扉の向こうに姿を消してしまいました。
「ミスターブルーバードを探すなら」
「小さな扉をくぐりなさい」
 扉を抜けると、今度は大きな湖のある場所に出ました。水は透き通り、日の光を浴びてキラキラと輝いて見えます。湖の遠くでは人魚たちが楽しそうに水しぶきをあげて遊んでいます。
「素敵なところね」
「きれいところだな」
 美しい光景にすっかり心を奪われていると、遠くからなんだか陽気な歌声が聞こえてきました。
 声はどんどんと近づいて来るようです。
「あら、楽しそう」
「子供ばっかだ」
 それは子供たちの行進でした。千鶴ぐらいの年の子から充よりももっと幼い子供までが、めいめい好きな格好をして愉快に元気よく歩いています。不思議なことに、大人の姿は全くありませんでした。
「見て、ピーターパンだ!」
 勇敢な探検隊を率いるのは空飛ぶ少年です。行進の一番先頭をゆうゆうと飛んでいます。
「ティンカーベルもいるわ」
 ピーターパンの隣には小さくてかわいらしい妖精もいました。
 姉弟は自分たちも彼らの仲間に加わりたくて仕方がありませんでした。
「やぁ、君たち。どうしたんだい?」
 二人の姉弟に気が付いたピーターパンが、声をかけて来ました。
「私たち、ミスターブルーバードを探しているの」
「皆を幸せにしてくれる青い鳥を見なかった?」
 「ミスターブルーバード?」

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