小説

『ミスターブルーバードをさがして』村山あきら(『青い鳥』)

「いやいや、見とらんな」
「でも、こっちに飛んできたはずよ!」
「なら、わしの仲間にも聞いてみよう」
 小人のおじいさんは家に向かって大きな声で言いました。
「おーい、皆。出ておいで」
 すると、おじいさんとそっくりな小人さんたちが、ぞろぞろと列になって出て来ました。
「一、 二……六、七!」
「全部で七人。七人の小人だ」
 なんとおじいさんたちは、白雪姫の七人の小人だったのです。
「私たち、ミスターブルーバードを探しているの」
「皆を幸せにしてくれる青い鳥を見なかった?」
「ミスターブルーバード?」
 七人の小さなおじいさんはその名を口々に繰り返して考え込んでいましたが、やがて皆そろって首を横に振りました。
「いやいや、見とらんな」
 子供たちはすっかりガッカリしてしまいました。またミスターブルーバードを見失ってしまったのです。
「どこに行っちゃったんだろう」
「そうだ、白雪姫の所にならいるんじゃない?」
 王子様のキスで生き返った白雪姫なら、きっと幸せに違いありません。
 けれども、七人の小人さんたちは困ったように顔を見合わせました。
「白雪姫に会うのは難しいよ」
「どうして?」
「白雪姫と友達じゃないの?」
 幼い姉弟にはおじいさんたちが、どうして困った顔をしているのか分かりませんでした。
 すると、一人が言いました。
「白雪姫はお城の自分の部屋から出て来ないんだ」
 二人目が言いました。
「かわいそうな白雪姫」
 三人目と四人目が言いました。
「悪いお后様に何度も殺されそうになって、人を信じられなくなったんだ」
「あわれな白雪姫」
 五人目と六人目と七人目が言いました。
「わしらにも怖くて会えないんだ」
「さみしい白雪姫」
「王子様にも会わなくなった」
 そうして小さなおじいさんたちは、声をそろえて言いました。

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