小説

『ミスターブルーバードをさがして』村山あきら(『青い鳥』)

「私だったら、毎日きれいなドレスを着られたら幸せなのに」
「僕だったら、毎日おいしいものを食べられたら幸せなのに」
 幸せの鳥を探す姉弟は、ガッカリしながら城を後にしました。
 これからどこに向かったらいいのか悩んでいると、お城の裏側にある森へと青い羽根をした鳥が飛んでいく姿が目に入りました。
「あ、ミスターブルーバード!」
「待って!」
 鳥を追って、子供たちは迷わず森の中に入っていきました。
 すると、姉弟の前に二つの扉が現れました。ふつうの扉と、小さな扉です。青い鳥はそのまま小さな扉をスッと通り抜けてしまいました。
「ミスターブルーバードを探すなら」
「普通の扉をくぐりなさい」
 千鶴たちは歌いながらふつうの扉を通り抜けました。
 扉の向こうには辺り一面に野原が広がっていました。遠くには小さな家も見えます。煙突からもくもくと煙を出しています。誰か住んでいるのでしょうか。
「あそこ!」
 青く輝く鳥は、その家を目指して飛んでいるようでした。
 けれども子供たちが目的の場所に辿り着いた時には、ミスターブルーバードの姿は既にありませんでした。
「まぁ、かわいい家」
「わぁ、人形のおうちみたい」
 姉弟はミスターブルーバードが目指していたおもちゃのような一軒の木の小屋をしげしげと眺めました。それから鳥を探して、ぐるぐると家の周りを歩いていると、中から男の子が出て来ました。
 「おやおや?」
 二人はびっくりしてしまいました。
「小人さんだったのね」
「小人さんだったんだ」
 男の子はよくよく見てみると、とても小さなおじいさんだったのです。
「わしらに何かようかの?」
 小人さんは物珍しそうに千鶴たちを見ています。
「私たち、ミスターブルーバードを探しているの」
「皆を幸せにしてくれる青い鳥を見なかった?」
「ミスターブルーバード?」
 おじいさんは少し考えてから、首を横に振りました。

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