若者の歓声と拍手が、会場を包んだ。拍手喝采というのはどこか雨のようだった。壇上では先ほど花束を渡した当事者の川口が、真っ赤な顔をさらに真っ赤にして照れている。たしか川口は井上とつるんでいた時期もあったはずだ。
「なぁ、お前さ美里に会いたい?」
横にいた岡本が、だしぬけに僕に聞いた時、僕は気取った評論家がするみたいな拍手を壇上に送っていた。岡本は片手にグラスを持ったままだった。会いたかった。すごく。かけてやるべき言葉も見つからないけど。だけれども、僕の口から出たのは、
「いや、どうだろうな……」
テーブルの上のぬるくなった炭酸の泡がちらほらと登っていくさまは、どこか白けた観客のようだった。