「みーちゃんは、確かに子供は産めない。結婚する気もない。世の中のバカな男にしたら、絶好の都合のいい女」
「何よ急に…」
「でもね」
俊ちゃんは、ゆっくりと私の頭に手をおいた。
「一緒にいると、すごく心をあったかくしてくれる。その真面目で優しい心は、人の心を溶きほぐしてくれる。1番とか2番とか、そんな順位の中に巻き込まれるような人じゃなくて、もっと遠くの離れた場所でいつも見てくれているような、そんな存在。どれだけ時がたっても、また会いたくなる人。みーちゃんはそんな人だと思う」
違う。違うよ、俊ちゃん。私はそんな素敵な人間じゃない。
俊ちゃんの手の温もりを感じて、私はまた泣いてしまった。
しかし、ふと思った。
「でもそれって、圏外の女じゃない?」
泣きながら私は言った。
「それは違うな。だって、みーちゃんは女性としても魅力的だもん。圏外になんて置いておけない」
俊ちゃんは笑いながら、私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「順位を気にして生きる人達と一緒の場所にいる必要はない。同じ考え方の中で物事をすべておさめようとするから、おかしくなるんだよ。どしっと構えて、20番目の女として、堂々と生きていけばいいのよ、みーちゃんは」
私の涙腺は崩壊したようだ。
「俊ちゃん…やっぱり…俊ちゃんって…」
「最高でしょー?それ、知ってるー」
俊ちゃんの笑顔を見て、私は顔をくしゃくしゃにして笑った。
今日もまた、耳障りな音が遠くで鳴り始めた。
目覚ましを止め、精一杯伸ばした手でエアコンの電源を入れ、冷たい空気に頭を撫でられて、私は目を覚ます。また1日が始まった。
ベッドから飛び出して勢いよく窓を開ける。空気の冷たさより、太陽の暖かさを感じている自分に気付いた。ひとつの決意で身体の感じ方まで変わるんだから、やっぱり私はバカなんだろう。
もう迷わない。
どんなにバカだと言われても、私は20番目の女として生きる。その人生を、精一杯生き抜いていく。それが、私の一番輝ける人生だから。