小説

『盗人と天女』多田宏(『竹取物語』『羽衣伝説』)

「え? まあ、振られるって言うかな」
「それじゃ、私は助左に振られたわけ?」
「飽きたわけでも嫌いになったわけでもねえよ。お互いの違いが俺にも解ったってとこかな。だがな、芙蓉、お前の言うウソがどんなものかは解っているよ。だからさ、俺もお前と一緒でウソつきじゃない証拠に、今、羽衣を返してやるよ。今まで楽しかったぜ。有難うな。すぐに天界に戻るなり、約束通り春になってから帰るなり、好きにしな」
 そう言うと助左は戸口から出て行き、家の裏手の床下に隠しておいた羽衣を持って来て芙蓉に渡すと囲炉裏端でぐうぐうと眠ってしまった。
 その後、助左と芙蓉がどうなったかは伝わっていない。

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