小説

『こびとの片想い』夢叶(『白雪姫』)

「どうしようか」
「おそらく、王子たちが来るのは時間の問題だろ。匿ってやればいいんじゃないか」
 ブラックが手を上げて、自分の意見を言った。
「でも、あの話だとうまく匿っていても強引に入ってきて、探しそうだよ」
 イエローが白雪から聞いた話を思い出したのか、身震いをした。
「…だったら、彼女を知らないふりをして追い出してしまったほうがいい」
 今まで何も言わなかったオレンジがポツリと言った。
「何を…。何を言ってるんだよ。オレンジ!」
 ブルーはオレンジに掴みかかる。
「だって、僕たちは今まで何事もなく平和に暮らしていたんだよ。彼女がいて楽しいときもあった。だけど、自分たちが危ない目にあうほど、僕は彼女に価値は感じない」
「オレンジ!」
「ブルー、やめるんじゃ」
 グリーンが仲裁に入ろうとして、それを見たイエローは僕を後ろから羽交い締めにした。
「レッドも言い過ぎじゃ。…白雪に関してだが、彼女から話を聞いてまだ心が落ち着いていないだろう。明日の夜、また話すとしよう。今日はゆっくりみんな休もう」
 何も決まらないまま、今夜の話し合いは終わった。仲間が自分の部屋に戻ろうと散っていくとき、居間の扉の向こうから足音が聞こえた気がした。

 
「どこに行くの?」
 再び森の奥に行こうと彼女に声をかけた。
 ビクッとした体でこちらを振り返り、困ったように笑った。
「ちょっと、夜風にあたろうと思って」
「さっきまで怖くて震えていたのに?…さっきの話、聞いてたんでしょ」
 気まずそうに彼女は目をそらした。思わず溜息をついた。
「君を追い出すことなんかしないよ」
「でも、みんなに迷惑がかかる。一番最初だって、勝手に家にあがって、強引に住まわせてもらっていたのに」
「強引にって自分でわかっていたんだ?」
 天然な人と僕らは認識していた。
「あの時も、必死だったから、お母様の暗殺者から逃げるので必死でやっと逃げ切れたと思ったら、夜は暗くて怖いし、食料もなかった」

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