小説

『こびとの片想い』夢叶(『白雪姫』)

 それを今、目標にして心の糧にしている。もう彼女が眠りについたときとは違う。彼女は生きている。だからこそ、激しい感情にフタをして今を頑張れるようになった。
「ただいま」
「おかえり」
「ご飯できているぜ!」
 帰ってきた僕らをイエローとレッドが出迎える。手にもつ皿には焼き魚がのっている。
「やっぱり魚か!」
「やっぱりとはなんだ」
「お前、また食糧調達にかっこつけて釣りしてただろ。この釣り好きめ!」
「いいだろう。うまいんだから」
 ブラックと仲間たちが騒ぎながら、席につく。
「イエロー、それ以外の家事全部やらされてない?」
「大丈夫だよ」
「聞こえているぞ!ブルー」
 茶化すようにイエローに声をかけ、自分の席で食事を取り始める。
 食事後にグリーンに文字を教えてもらう予定だがまだ時間があるので外へ出た。
 月夜に照らされ、少し森を散歩してみる。風が髪をなびかせ、誰かに撫でられているようで心地よい。
 いつも、白雪が眠っていた場所まで行って、ぼっとしてから家へ帰る。草木をかき分け、月明かりがあたり、明るい場所が出てくる。
 だれもいないはずのそこには人影が見えた。
 草木をかきわけたときの音に気付いて、その人影は振り返った
 「…白雪」
 そこには、涙を目にためた彼女が立っていた。
「ブルー!」
 瞳から涙が流れ出し、彼女は僕に抱きついてきた。

 
 彼女を落ち着かせるために、僕は彼女を家に連れ帰った。
 そうすると、他の仲間たちが懐かしい来客に驚かせ、集まってきた。
 家に来るまでに彼女の涙は止まったが、泣いていたことは目の赤いはれですぐ分かる。
 仲間たちはじっと僕のほうを見たが気づかないふりをした。
「白雪。どうして、またこの森にいたんだ?」
「…殺されそうなの」
「えっ…」

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