「ブ、ブルー!大変!」
「どうしたんだ?」
「し、白雪が…ブルー!?」
彼女の名前を聞いたとたん、何も聞かずに彼女の棺に走った。
何がどうしたのか分からないが、彼女に何かあったのだとしたら…
彼女の棺の周りには、喜び合う小人の仲間と動物が囲んでいた。その中心にいたのは、心が求めてやまない人だった。
「…白雪?」
白雪が起き上がり、棺から降りようとしていた。
幻想ではないかと目をこする。何度もこすっても、自分の足で立つ白雪の姿は消えない。
涙が止まらなかった。彼女が目を開けて笑っている。
「し、白雪…」
思わず駆け寄ろうとしたら、白雪のそばには見知らぬ男が目に入った。
「ありがとう」
小綺麗な服を着た男に笑いかける白雪を見て、男に苛立ちを覚えた。そんな二人を皆取り巻いて見守っている。
「おまえも来たのか」
僕の隣に、いつの間にかグリーンが立っていた。彼の顔も涙で濡れていた。
「これは…?」
「わし達が白雪に会いに来ていた時に、山の向こうの国の王子というあの人が来てな。白雪を見て、その美しさに目を奪われたらしくてな。ガラスから抱き起こし、唇にキスをしたんじゃ。そしたら、白雪が急に目覚めたんだ」
「キス?」
「くちづけのことじゃ。白雪がまた目を開けてくれてよかった。…本当に」
またグリーンの目から涙があふれた。
僕のキスでなく、アイツのキスで目覚めた。その事実に何かが胸に刺さった感じがした。
白雪は頬を薔薇色に染め、アイツを見つめていた。アイツは彼女を抱きしめ、頭を撫でる。
その姿を皆、涙ぐみながら優しい目で見つめているが、僕は違った。
イライラが止まらない。この感情はなんだろう。
二人の間に割って入って、アイツの顔面を殴りたい気分だ。
しかし、白雪は幸せそうに笑っているのを見て、また彼女の笑顔を見ることができた喜びも同じぐらいあった。
「ねぇ、グリーン」
「なんじゃ」
「白雪を見ているとだけでドキドキしたり、嬉しくなったりする。だけど、アイツと一緒に笑っているところを見るイライラする。これは好きという感情なのだろうか」