「平気平気!むしろメイク始めてから肌の調子もいいんだよね!」
「…あんたって痛い目合わないとわからないタイプだよね。」
お姉ちゃんに哀れな目を向けられたが、夏帆は特に気にしなかった。
春が近づき、少し暖かくなってきたある日、いつものようにダラダラ過ごしていた夏帆に異変が起こった。この日もメイクを落とし忘れたまま寝てしまった夏帆は、メイクを落とそうと顔を洗いに行ったのだが、肌はカサカサで吹き出物が顔中のあちこちに出来ていることに気付いた。メイクでカバーしようとしたが、ファンデーションもノリが悪い。
「高いコスメ使ってるのになんで…?もうすぐ新学期が始まるのにどうしよう。」
ショックを隠せない夏帆は、美容マニアのお姉ちゃんに助けを求めた。
「肌の調子が良くないんだけど、お姉ちゃん前にスキンケアがどうとか言ってたよね?教えてよ!」
「だからお手入れしなよって言ってあげたのに。自業自得だよ。スキンケアは毎日するから意味あるの。肌荒れ起こしてからじゃ遅いんだよ。」
お姉ちゃんに相手にしてもらえず、どうしたものかと肩を落とし家の中を歩いていると、前からおばあちゃんが歩いてきた。
「夏帆ちゃん、いつもの元気がないみたいだけどどうかしたのかしら?それに今日はお化粧もしてないみたいねぇ。」
おばあちゃんが心配そうに尋ねてくる。
「高いコスメ使ってるのに肌が荒れちゃって…。お姉ちゃんには肌のお手入れをしないからだって言われた。肌荒れ起こしちゃってからじゃ遅いって。おばあちゃんはいいよね、何のお手入れもしてないのに肌キレイだし。これからどうしよう。」
夏帆はおばあちゃんのキレイな肌を見つめて溜め息をついた。そんな夏帆の話を黙って聞いてくれていたおばあちゃんだったが、突然夏帆の腕を掴んだかと思うと老人とは思えない強さで何処かに連れて行こうとする。
「いつまでもうじうじしてるんじゃないよ!ついてきなさい!」
「は、はい…。」
おばあちゃんに圧倒された夏帆は、黙って着いて行くことにした。
おばあちゃんに連れられてやってきたのは、キッチンだった。
「おばあちゃん、キッチンに何かあるの?」
「さっき、夏帆ちゃんはおばあちゃんの肌がキレイだって言ってくれたね。」
「うん。本当にキレイだから。」
「何もお手入れしてないのにとも言っていたねぇ。」
「だっておばあちゃんがお姉ちゃんみたいに肌のお手入れしてるところ見たことないよ。」
「じゃあ、特別におばあちゃんの秘密を教えてあげる。おばあちゃんはね、毎日これを使ってるんだよ。」