小説

『20歳のぬかどこ』平山美和

 おばあちゃんの大きくて飴色になって年季が入っているぬか床とは違い、夏帆のぬか床はオシャレな雑貨屋で買った可愛くて小さめのものだ。可愛いキャラクターの絵柄もついていて、とても気に入っている。
 ぬか床作り初心者の夏帆は、おばあちゃんの米ぬかを分けてもらい、キャベツの外葉やにんじんのへたなど水気の多い部分を使って作ることに決めた。美容マニアのお姉ちゃんにも食べさせてあげようとカロリー控えめの漬物を作りたいと思ったのだ。ぬか床は、困っていた夏帆の救世主なのだ。お姉ちゃんにもぬか床の良さを教えてあげたい。そんな思いも込めて、夏帆は今日もぬか床の手入れに励んでいる。
「ねぇ、おばあちゃん!毎日ぬか床の手入れをしてるからかな?最近、肌だけじゃなくて手までツルツルになった気がするよ!」
 今日も自分のぬか床の手入れをしている夏帆は、隣で同じようにぬか床の手入れをしているおばあちゃんに笑顔で話しかけた。
「夏帆ちゃん、嬉しそうだねぇ。それに毎日楽しそう。」
 楽しく話す夏帆を見て、おばあちゃんも嬉しそうに笑ってくれた。
「これも全部おばあちゃんとぬか床のおかげだね!」
 大嫌いだったはずのぬか床がいつの間にか大好きになるなんて自分でもびっくりだ。楽しそうにぬか床の手入れを続けるおばあちゃんを見て、傍から見たら自分もこんな風に見えてるのかなぁと思うと少し可笑しくて笑みがこぼれた。

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