小説

『丘の上の魔法使い達』洗い熊Q(『オズの魔法使い』)

 実は車長、無線の電源を入れたまま。四人のゲロの和音、味方戦車隊に無線を通じて響き奏でた。
 ゲロゲロゲロゲロ~。
 その響きを聞いた兵士達。吊られてか、それともここぞとばかりと思ったか、皆も揃って我慢しきれんと許りに吐き出した。
 ゲロゲロゲロゲロ~!
 味方兵士達のゲロの臭気。風に乗って酸っぱい匂いが敵戦車隊を襲う。
 これは堪らんと思ったか、それとも好都合と思ったか、敵兵達も吊られて車内でゲロを撒き散らす。
 ゲロゲロゲロゲロ~!
 あっちでゲロゲロ、こっちもゲロゲロ。
 激しい砲撃の炸裂音が静まったかと思ったら、味方も敵も皆揃って仲良くゲロの大合唱。
 ゲロゲロゲロゲロ~!!
 静かな荒涼に暫くの間、響くゲロの合唱。この戦いがゲロ戦記と呼ばれた由縁だった。

 
「にゃははは! なんじゃそりゃ!? ゲロゲロゲロゲログワッグワッグワッてか!?」と猫は車体の上で転げ回って笑っていた。
「どうだ面白かったろう?」と戦車は満足げだ。
「ええ、とても面白かったです! 歴戦の勇者は色んな経験をなされているんですね」とカカシは感激して上ずった声になっている。
「そうだろう、そうだろう」
「まあ結構、脚色している感が否めないが、爺さんの話術の巧みさは褒めるに値するなこれ」と一頻りの笑いに飽きると猫は顔を洗いながら言っていた。
「口の減らん奴だ。上から目線の口上、癪に障るぞ。お前もどうだ? 面白い話をしてみせろ。わしは語ったんじゃ、何か喋ってみい」
「そうですね、是非に猫さんのお話も聞いてみたいです」とカカシも興奮気味に言っていた。
「え~俺の話かよ~喋るのは苦手なんだよな~俺~」と猫は尚更に激しく顔を洗っている。
「口から生まれたかの存在な癖に何を恥ずかしがる……カカシ君よ、こう言っては何だが、こいつは間の抜けた見た目とは裏腹に、死線を潜り抜けてきてる奴じゃ。笑える話が出来るかどうかは知れんが、多少は為になる話はしてくれる」
「それ貶しているのか? 褒めてるのか? まあ分かった、話てやるよ。笑える話かどうかは分からないが気分がスカッとするような話かな」と猫は欠伸がてらに語りを始めた。

 

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