小説

『ひきこもりハウス 魔法少女編』紅緒子(『注文の多い料理店』)

 王を弔うために聞いた初音ミクのクラシックをまた口ずさんだ。遠い過去から、同じ魂を持つひきこもりたちの叫びが僕を少しだけ救う。

千本桜 夜ニ 紛レ 君ノ声モ 届カナイヨ。

 桜はただ突っ立って深呼吸し、花を咲かせて散っていく。植物のように世界の傍観者のままでいたかった。どうやったら甘く溶けて消えられるのだろうか。
 答えがほしくて、砂糖いっぱいのココアを一口飲んで息を吐いた。一杯のココアの中に僕が溶けていく。だけど王が死ぬ前のように、ココアで酔うことはもはやできなかった。

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