コツコツコツコツと少しづつ地面をくずして、本のページをめくるように、土を払っていく。そして、古代の遺跡を見つけるんだ。何百年も何千年も前の人々が触れたものを、今を生きているぼくが触る……どんな気がするだろう。
ぼくは龍宮城の発見者になるのが夢だ。
そう、あの浦島太郎も行った龍宮城だ。笑う人もあるかもしれない。
だけど、思い出してほしい。シュリーマンだって、幼い頃にきいた伝説をずっと信じ続け、ついにトロイの遺跡を発見したじゃあないか。
ぼくも、龍宮城に興味をもったのは『浦島太郎』の絵本がきっかけだった。絵本の乙姫様が、なおこお姉さんに似ていたからかもしれない。
もちろん、ぼくだって今でも龍宮城に乙姫さまがいたり鯛やひらめが踊っているとは思っていない。
でも、古代のアトランティス大陸がなんらかの理由で沈んでしまったように、どこかに廃墟となって潜んでいる龍宮城があるんじゃないかと考えているのだ。
誰もなしとげたことのない発見をしたら、なおこお姉さんははなんて言うだろう。「すごいわぁ、マサキちゃん、さすがね」と、それはとっても感心してくれるにちがいない。 喜んで抱きしめてくれるかもしれない。
そしたら、そしたら、どうしようかなあ。それだけのすごい発見をしたら、なおこお姉さんをお嫁さんにすることだってできるんじゃないだろうか。
「ね、マサキちゃん」
びくっとして、なおこお姉さんを見た。
「このカメ、何歳ぐらいだと思う? 〝鶴は千年、亀は万年〟というけど」
亀は万年……? ぼくの胸に不安が広がったのはこの時だった。
カメはほんとにそんなに生きるのだろうか。このカメはいったいどこから来たんだろう。なおこお姉さんの家に何しに来たんだろう。次々に疑問が湧いてきた。
ぼくは、今まで城跡がどこにあるのかを推理をしたり、物語をどう解釈するのかということだけに夢中になっていた。
でも、浦島太郎の物語に出てくるあのカメはいったいどうなってしまったのだろうか。ほんとうにカメが、人よりはるかに長い命を持つのだとしたら、乙姫さまのしもべだったカメは、今どうしているのだろうか。
龍宮城の誰よりも長生きしたカメは、気が遠くなるほどの長い時をもてあましながら、今もたった一人でかつての主人、乙姫さまを想っているのだろうか。