なんだろう、これは。
目の前で妹が呼び出されている。というか、ほぼ間違いなく十分以内に告白される。私の好きな人から。
「えっ」と上ずった声をあげながらもすでに靴をはいている妹(土間に置いてあった靴ではなく、わざわざ靴箱から一番可愛い靴を取り出した)と、緊張した面持ちの彼。二人をぼんやりと見ている私。
今の私、脇役感はんぱないなぁ。
彼と妹は、私の存在をすっかり忘れている。ただならぬ緊張感を漂わせ、家から出て行った。二人が出て行った後のドアがゆっくりと閉まるのを見届ける。
なんだろう、これは。
私のこの、脇役感は。私の人生においては、私が主役のはずなのに。
立ち尽くす私の足元に、窓から射し込む光が陽だまりを作っていた。
詩絵良が妹になったのは、私が小学校四年生のときだ。
私を一人で育てていたママが、今のお父さんと再婚した。お父さんの娘が詩絵良だ。
四人で暮らすため、新しい家に引っ越した。私は校区内だったから転校せずに住んだけど、詩絵良は私が通っていた小学校に転入した。
妹ができるのは嬉しかった。年の近い子が同じ家にいれば、いつでも遊べて楽しいに違いないと思っていたのだ。
だけど、一緒に暮らし始めてすぐに気づいた。
あ、この子合わないな、と。
初めは、詩絵良がまだ二年生で幼いから話が合わないのかと思っていた。でも、そうではない。もしも詩絵良が同い年で同じクラスにいたとしても、私たちは友達にならなかっただろう。
詩絵良はとてもいい子だ。ピーマンも残さず食べるし、言われなくても宿題をするし、玄関では靴をきちんと揃える。おとなしくて女の子らしくて、いつもニコニコしている。
だけど、どうしても仲良くなれそうにない。
詩絵良は私と遊びたがるので、姉としての義務感で一応遊んであげる。でも、遊べば遊ぶほど、何とも言えない感情に包まれる。詩絵良のことが嫌いなわけではないのに、なんだかモヤモヤするのだ。
当時の私はそのモヤモヤを言語化できなかったが、16歳になった今は、できる。
詩絵良は痛いのだ。