「幼稚園とか小学校低学年の話だって。それより休み時間終わるから、マジであいつ呼びにいったほうがよくね?」
「だね」
私は、ありがとっ、と斎藤くんに言って教室を出た。
裏に向かいながらスマホでさっきのアカウントを検索すると、画像がいくつか出て来た。
そこには私の知らない花音がいた。
黒髪を巻いている花音。眉が少し茶色い花音。ギターを持つ男の人の前でお揃いのパーカーを嬉しそうに着ている花音。韓国風のメイクやつけまや赤リップが映える花音。男の人の部屋でパジャマ姿ですっぴんを袖で隠している花音。中にはカクテルを持っている花音や、タバコを吸っているように見える花音もいる。
こんな花音知らない。
校舎を出て裏へ曲がると、花音が花壇に腰掛けていた。
「あ、来た」
そう言う花音に、まぁ、と返事をした。
「来るでしょ、そりゃ」
「だよね。ミカ優しいもんね」
「まぁね」
「あ、認めた」
「まぁたまには。斎藤が、言いふらしたりしないからってさ」
「うん。黙っててごめん」
「別に何でもかんでも話せとかいう約束してないし」
「怒ってる」
「別に」
私は花音の前に立って、立ったところで何をしたらいいかも分からないから、花音を見下ろして話した。
「付き合ってるんだ。っていうか彼氏いたんじゃん」
「うん」
「メイクとか超してたじゃん。相手バンドマンじゃん、ゲスの流行りタイプじゃん。楽しそうじゃん」
「うん」
「言ってくれたらよかったのに。私ばっかり全部花音のこと知ってるって思い込んで、私は何でも話しててバカみたいじゃん」
「そういうつもりじゃなくて、でも、ごめん」