小説

『カノン』柿沼雅美(『花をうめる』)

 同じ旋律を別のところから追いかけて繰り返す音楽みたいに、この場所で季節がまわって、花がめぐって、誰かが私たちのようにここで時間を過ごすことがあるだろうか。
 そんなことを思いながら、ストローから口をそっと離して、同じ土の中に埋めた。花音にはもう絶対に追いつけない、でも、私はもっと花音を追いかけたい。そんなことを思いながら、そっと土をかけた。
 

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