それからずいぶん時間をかけて、私は一つの結論にたどり着いた。間延びした声で、教室の奥からまつながくんの名前を呼ぶ太い声がした時、その音がゆっくりとぐにゃりと頭の上を一周するころ、私はようやく決心した。強く。ものすごく、強く。
家族のことだから、他人としてなるべく口を出さずにいよう。それはこれまでの不文律で、お互いが越えてはならない一線だと遠慮していた。
けれど、それを越えなければならない時というのは、必ずある。絶対に、確実に、何よりも強く存在する。その時には全力を尽くすしかない。それには覚悟が必要になる。強い覚悟だ。
私は今その覚悟を決めよう。
私は自分を奮い立たせた。彼の幸せのためになら、徹底的に戦ってやる。彼が幸せになるために、全身全霊をつくしてやる。大げさでなく、これ以上突き進むにはそれほどの決意が必要なのだ。
私はまずシャツのボタンをひとつあけ、大きく深呼吸をした。それからまつながくんにそっと声をかけた。
触れた彼の肩は、まだ温かかった。