小説

『A Boy Behind the Shutter』植木天洋(『オリバー・ツイスト』)

 陶器の重くなりがちな印象を、あえて薄く作っていることで繊細さが醸し出され、新しい印象になっていた。
 作家らしい二人の女性――二十歳前後くらいの――が顔を寄せ合い、商品の置き方を話し合っているようだった。なんとなく耳をすませてみるといいアイデアが浮かばないらしく、私は思わず彼女たちに声をかけた。美大出身で展示の経験があったので、少しは役に立てる気がしたのだ。
 私はちょっと緊張しながら、彼女たちに声をかけた。
「大きいものは後ろの方へ置いた方がいいですよ。それから色の強いものをアクセントにすると全体が華やかに見えますよ」
 彼女たちは最初少し驚いた風に私を見て、それからぱっと笑った。
「そうですね。ありがとうございます」
 さらにいくつかの陶器を並べ替えると、最初と比べて商品が見やすく魅力的になった。二人はとても喜んでくれて、ちょっとしたことだったけれど、私は軽い達成感に満たされた。同時に気持ち良く仕事を終えられてほっとした。
 ボランティアって、こういうことでいいのかな? 着物の女性はまだ見つからなかったけれど、これなら自分にも手伝えることはありそうな気がした。
 さて、次は何をしようかと目を巡らせると、薄いイエローのレジャーシートを敷いて、生活用品を売っているブースを見つけた。素っ気なくて、おいてあるものもとりとめがなく、はっきり言ってショップとしての魅力は低い。
 シートの中央に小学三年生くらいの男の子が寒そうに躯を縮めて体育座りをしていた。肌寒い季節だというのに、半袖と半ズボンで、裸足だった。
 大人はどこにいったのだろう? いくらフリマとはいえ、子供一人に店番をまかせていなくなるなど非常識だ。子供が自分でやりたいと言うのなら見守るべきだし、それ以上に今目の前にいる少年は「自分から」やっているようには見えなかった。
 ひどく不安そうに視線を一点から動かさず、躯を守るように猫背になりきつく足を抱きしめている。気になって声をかけてみると、彼は怯えた様子で私を見上げた。
「こんにちは。お店の見栄えが良くなるように、ちょっと手をいれてもいいかな?」
 彼はぼうっと私を見て、しばらくしてコクリとうなずいた。彼が見ている中、商品を手に取る。誰が買うのだろうというほど使用感のあるものから、箱入りとはいえ型番が古すぎてもう使用できないのではないだろうかと思える電化製品まで、様々なものが置かれていた。
 それはいわゆるガラクタだったが、それでも手を入れれば少しは見栄えが良くなりそうな気はした。よし少年のために一肌脱ぐとするか、そう心をきめて私が名乗ると、彼は一言「まつなが……」と名乗った。
「じゃあまつながくん、一緒にやろうか。君はぬいぐるみを箱の中に集めて入れてくれる?」

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