小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

まあ、そういうことなんだが。
そういうこと、なんだが?
死んだのよ。
死んだ!?
天を仰いで、神さまに、お礼をよ。
言いながら、な、満足そうな顔で。
そんな・・・結末・・、悲しすぎだぜ。
まぁ続きがよ、あつてな。
おっ、生き返ったんだな!
違う形で、な。
違う形?
ああ、人間に、な、多分。
なにー! 多分? 人間にだとー。
まぁ、多分。
分からんなぁ。
続きはこうよ。

しばらくして、ある日、一人の旅の坊様が。
この一部始終を、村人たちから聞いた。
そこで、おもむろに話し出した。

おもむろに話し出した?

人間になりたかった、カッパの話を、な。
へー、人間になりたかった、カッパの話?
ああそう、よ。
命と引き換えに、罪滅ぼしして、よ。
いつか、人間に、なってよ、この村に。
坊様のこの話を聞いて、早速村人たちは。
カッパが住んでた湖畔に、祠こしらえて。
いつまでも語り伝えたのよ、この話を、な。
 スゲー! いい話だ。
だけどよ、なんで人間なんかに、よ?
それがどうにも、分からん。
そのために、命がけの祈り、分からんなぁ? 

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