小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

 な、何だよ、そんな攻撃的な言い方よ。
 まぁ、いつものことだから、いいけど、よ。
で、雨乞いが、どうしたんだよ。
太古の時からな、シャーマンよ。
そういうの、目にしたことないのか。
資料映像とかで。
 資料映像とかで?
いくらでも目にしたさ、現物をよ。
ドイツ人、イングリッシュで、ジャーマン。
ドイチュよ、ドイツ語なら、な。
常識ってー言うものだ、それくらい、よ。
 ハハハハ、ジャーマンだと。
ハハハハ、シャーマンだって、シャーマン! 
シ、シャーマンだと?
やっぱり知らないんだな。
定番だろ、祈祷とかの、よ。
 定番だと! 巫女だろ、祈祷とくればな。
この地では、よ、巫女! 巫女さんよ!
 たしかに、この地では、巫女さんだよな。
 そうよ、巫女さんよ、なにがシャーマンだ。
 へー、洋風、気に入らないのかよ。
あるんだぜ、巫師ってー漢字も、よ。
 なに、ごちゃごちゃ、言ってるんだよ。
いいから、続き話せよ。
 よし、続きだな、で、祈祷なんだが、よ。
 そりゃー、祈り、ってーもんだな。
 うーん、まぁそういうことだな。
 その、祈り、がどうした?
 命がけよ。
命がけ?
ああ、雨乞い、このための、なんだが、よ。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15