小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

はるか彼方に聳え立つ。
ノイシュバンシュタイン城。
眼下の湖畔、ここの、西洋祠。
これ目にしていると。
こんなやり取りが、聞こえる。

城の最上階の饗宴の間。
突き出したテラス。
そこに、月光に照らされた人影。
王の、寂しそうなシルエットだと、分かる。
何を、祈っている、のか。
更け行く晩秋の森に、梟の声が。
ホーホーと、穏やかに、聞こえ・・。

さてさて、これで終わりではありませんよ。
えっ、終わりではない?
では、少し巻き戻してみようか。

人間の祈りについての行動観察研究所。
ああ、それそれ。
祈り、なんだろ、それも人間の、よ?
分からんなぁ、全くよ。
まてまて、いや、分かるぞ。
えーっ、分かるだと!
まぁ、分かるって、気がしてきたのよ。
随分、難しい、ことをよ。
単純よ、祈りさ。
祈り?
ああ、祈り。
分からん。

この巻き戻しには。
一つ、付け足す必要があるのだ。
祈り、そのパワー。
人間界では、よく知られた。
祈りパワー、この科学的実証。

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