小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

 この曲、指揮、ワグナー?
まさか、こんなところに、な。
いや、こんな時代に、というか。
ワグナーだって困るだろうさ、きっと。
随分、肩もつんだだなぁ。
肩もつ?
ああ、そうだろうさ、呼んだ手前だろ。
ニクスのお前に、言われたくないな。
ニクスで悪かったな。
まぁ、ここでは俺もニクスだけど、よ。
そうここでは、ニクス、ニクス、ハハハハ。

さーてと、この地で、旅も、よ。
ようやくよ、一段落だなぁ。
ああ、なんとかなぁ。
あの長ったらしい、ネーミング。
なんって言ったかなぁ。
人間の祈りについての行動観察研究所。
ああ、それそれ、祈りの、研究だと、よ。
なんでだろなぁ、それも人間の、よ。
分からん、分からん、カッパ界が、な。
あんな立派なの、建ててよ。
うーん、まてまて、いや、分かるぞ。
えーっ、分かるだと!
まぁ、分かるって、気がしてきたのよ。
祈り、だぞ、それもよ、人間だぞ。
ああ、人間のだ。
随分、難しい、ことをよ。
キッパリと、分かるんだな。
大した御仁だ、の、コンコンチキよ。
ハハハハハ、そう来なさるか。
お前の、小ばかにした言い様、まぁな。
な、何だよ!
まぁな、ってー、どんな了見だよ。
幸せ者、ってーことよ。
幸せ者? 俺が?

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