小説

『テシガワラ社長の止まらない朝』吉原れい(『裸の王様』)

 ナミコはまるで少女のようにはしゃいだ様子で部屋を出て行った。
 ナミコを見送ったテシガワラ社長は、ふと足元に違和感を感じた。
 まさか。まさかまさか。
 テシガワラ社長がおそるおそる布団を捲ると、そこにいたのは、愛猫のアサヒだった。テシガワラ社長はほっとして、アサヒを抱き寄せ、いつものようにその肉球をぷにぷにと触った。
 そんなテシガワラ社長の様子を、小人のクスノキたちが、窓辺から、一仕事を終えた顔で優しく見守っていた。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11