結局、取り残されたのは私だ。投書が見出されなくとも、私は何か理由をつけて、この土地を出ていっただろう。父が死に、独りになった時点で――死者の数が生者を上回った時点で――この家はもう、私の住む場所ではなくなっていた気がする。
家族とは、どこか別の場所へ行ってしまったのは、私の方だ。今夜この日に、私こそが『帰って来た』のだ。だから、見方を変えれば、『覗いている』のは私の方だ。
「みんな元気そうだね。そっちはどうだい」
可笑しい話だ。これではまるで、私こそが、寒戸の婆だ。
そうですわね?――と私は、心の中で呼びかける。母に? 妹に? 父に? あるいはこの地に埋もれた、無数の異形のものたちに?
本当にこんな夜には、
寒戸の婆が還って来るね。