「そうかも。とにかく、早く行こう。」
早足で広場へ向かうと、人々が集まっているのが見えた。人々の中心にはあの男がいた。
「よくのこのこと来れたもんだね、あたしゃ昨日、あんたのせいで死にかけたんだよ。」
「なんで笛を吹く前に俺達に一言言わなかったんだ。俺はあの騒ぎのおかげで転んで腕の骨を折っちまった。」
「あんたみたいな、変な格好の奴に払う金なんかないよ。とっとと出ていきな!」
人々は口々に言って男に物を投げつけていた。
「ちょっと、みんな…何してるの…?やめようよ…」
私の呟きは誰にも届かなかった。みんなは口々に「出ていけ!」と繰り返してた。
不意に男が動いた。スッとどこからともなく笛を取り出す。そして、笛を吹き始めた。
昨日とは違う、綺麗な音色。その音を聞いた瞬間、私の体は崩れ落ちた。
「ウェンディ!ジョン!マイケル!」
ナナがそう叫ぶのが聞こえた。
目を覚ました時、私は眩しい光の中に浮いていた。私の周りにはジョンやマイケル、他にもハメルーンの町の子供たちが沢山いた。
「お姉ちゃん!」
ジョンが私に抱きついてきた。
「ジョン、痛いところとかない?」
「うん。大丈夫!」
ジョンは大きく頷いた。
「やっとみんな起きたね。よかった、みんな無事みたいで。はじめまして、と言っておこうかな。」
頭上から声が聞こえて上を見上げる。そこには、妖精のような、緑色の服と、茶色のズボンを履いた10歳くらいの男の子が飛んでいた。赤茶色の柔らかそうな髪で、綺麗な顔立ちをしている。