信じられなかった。でも、急に部屋が寒くなったのも、パパたちが凍えるように死んでいたのも雪女の仕業だって考えると納得ができた。
「そっかぁ。体質?」
「うん」
「異常だね」
部屋を沈黙が包んだ。
「あ、あのさ」とユキが口を開いた。「なんとか、するから、この死体。だから、お風呂にでも入ってくれば? 死にそうだよ?」
アドレナリンが出ていて気づかなかった。僕の手足は死体みたいな色になっている。手足の感覚さえない。でも、部屋にこの女をひとりにしておくのは危ないことだと思った。不法侵入してきた女は人殺しだ。
「そのパンツ、いいじゃん」とユキがいった。僕はそれでうれしくなってしまったから、
「じゃあ、任せるよ」といって僕は脱衣所に向かった。
お湯に浸かっていると、今までで一番の、なにもかもを凍らせてしまうような冷気が唐突にやってきて、僕はお湯の温度を一気に上げないといけなくて、ガス代が心配だった。そのすぐあと、なにかを砕き、削る音が聞こえてきた。
お風呂から上がって、着込みに着込んで部屋にもどると、パパの死体が消えていた。代わりにユキが床に座っていた。ユキの目の前のテーブルには細かい氷が盛られた小鉢がある。
「なにそれ?」と僕は聞いた。
「かき氷。食べる? おいしいよ?」
ユキがあーんとしてきたから、食べるしかなかった。僕はまだユキを信用することなんかできなかったし、なにがユキの怒りに触れるかなんてわからなかった。従うしかない。下手に刺激して殺されるわけにはいかない。だから僕は仕方なくかき氷を食べた。僕がかき氷が大好きなことなんかまったく、ぜんぜん、本当に関係がない。
「あ、おいしい」
「ユキ、なんだよね?」僕は水に向かっていった。
「さっきからいってるじゃん」と水が答えた。「コップに移してほしい。このままだと見づらい」
「あ、見えるんだ。目は、どこ?」