「はあ?人の話聞いてた?」
「いいじゃん。わたし、そもそもアイス買いに行って鉢合わせしちゃったんだよ。折角だし、一緒にアイス買いに行こ」
昔、学校の帰りにこっそりしてたみたいに。
「……この寒いのに?」
「だからいいんじゃん」
暫く睨み合ってから、かんちゃんは渋い顔で溜め息を吐いた。
「いいけど、じゃあ次は邪魔しないでよ」
「努力します」
へらっと笑って答えると、切り替えの早いかんちゃんはさっさと歩き出した。アーケードの一番向こうにあるコンビニは、もちろん二十四時間営業だ。
「でもさ、かんちゃん、やっぱり諦めない?ホントは怖いんでしょ?」
「やだね。あんたこそ」
「やなこった」
多分、わたしたちは気づいている。
かんちゃんのやり方もわたしの言い分も、どっちもあまりに極端で、幼稚で、歪んでいることに。
きっとこれからも、かんちゃんは無様にでも這い上がろうとする。わたしはそれを強引にでも引きずり下ろしたい。無茶な手段に訴えるかんちゃんが心配だから?否定はしないけれど、それだけじゃない。
多分、大人になんてまだなってほしくないから。
そうやってもたもたと足を引っ張り合っているうちに、わたしたちは否応なしに大人になってしまうんだろう。
だけどわたしたちは後に引けない。だって、聞き分けのない子どもだから。
「かんちゃん、あのネックレスさ、ホントにお父さんに買ってもらったんでしょ?」
「……嘘はついてないよ」
「確かに」
かんちゃんがニヤッと笑うので、わたしは吹き出した。
わたしたちは並んで夜の底を進む。その行方は、誰も知らない。