「なるほど……今風ですね」
「バカみたいなこと言ってないで、話があると言ったろう。その鬼についてだよ」
「何と、そうですか」
お婆さんの表情を見て、桃太郎も真剣な面持ちになる。
居間へ行くと、お爺さんが神妙な面持ちで座っていた。お爺さんの前の机には、白い小さな団子が山と積まれている。そう思って見れば、お爺さんの口がわずかに動いている気がしないでもない。
「またつまみ食いしましたね」お婆さんが言うと、お爺さんは笑って頭を掻いた。
「いやすまん、旨いから、ついな」
「これは?」桃太郎も座布団に腰を下ろす。
「黍団子だよ」お婆さんは言いながら、白い山から一粒つまんで自分の口に放り込んだ。と口をもぐもぐさせながら「うん、いい出来だ」とひとりごちる。
「それは分かりますが」桃太郎も黍団子を一つ、口に入れる。弾力のある、しかし柔らかな食感と、主張しすぎない上品な甘さが実に美味である。
「鬼退治に言ってもらう」
やや唐突に、お爺さんが口を開いた。シリアスなのかなんなのか、どうにも解りづらい。急ですね呟けば、急だろうと返ってきたので、桃太郎の方ではどうしようもない。
「お前が怠けに怠けたでくの坊に育っていたら、御近所の手でも借りてけしかけるところだったが、その必要は無いようで安心したわい」お爺さんはもう一つ、黍団子をつまんで口に入れ、お茶をすする。
「鬼退治ですか。そうですね。ひと様に迷惑をかける輩は、この手で懲らしめてやりますよ」言って、桃太郎は黍団子を嚥下した。言ってから、鬼は何か悪さをしているのだろうかと思い至る。とはいえ、どうあっても行く事になるのだろうという予感はあった。
旅支度をし、最後にお婆さんが桃太郎に黍団子の入った袋と、幟を一本渡した。
「服装はどうしましょう。陣羽織とかですか」今更ながら問う桃太郎に、お爺さんは、
「なんでもよかろう。大した違いはない」
「防御力とか、変わってくるでしょう」
「そんな細かい戦闘にはなりゃせんよ」
「はあ」