「どうして死んじゃだめなの?」
「だって、」
マコトはびっくりした。
どうして死んじゃだめだって? だってそんなの決まってる。死んじゃったら、死んじゃったら。
「ボクが泣いちゃうから!」
マコトはそう言って「少女」の体にしがみついた。
「ダメなのー! 死んじゃだめなのー!」
マコトはわんわん泣き出した。
暖かい暖炉もごちそうもあげられない。
マッチも買ってあげられない。
おばあさんにも会わせられない。
「マッチ売りの少女」のしたいことはなにもできない。
マコトにはなんにもできない。
「ぼくはまだ子供だからお金ももってないし、ごはんも作れない。でも待ってて、大人になったらぜったいマッチを買うから。だから待ってて!」
「少女」はマコトの体に腕を回した。
「ああ、あたたかい」
そう言ってマコトをぎゅっと抱きしめた。
「暖炉よりあたたかい。ごちそうよりうれしい。おばあさんより会いたかった」