小説

『主人公』あおきゆか(『機械』横光利一)

 私はこの森で起きたことはすべて主人の策略ではないかと疑い始めている。そうだ、私はもう俺ではなく私になった。私はもう主人公ではない。屋敷の暴走も、私と軽部の確執も主人はとうに知っていて、いずれ三人の仲がこじれて森に行ってくれればいいなあ、とあの呑気な頭のなかで考えていたのではないか。それとも最初から「俺」にも軽部にも屋敷にも思考する自由など許されておらず、ここまでは私たちを一掃するための小説であり、物語にはとっくに新しい人物たちが登場していているのかもしれないが、私にはそれを知ることはもうできそうにない。

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