小説

『心のこもった余興ムービー』村崎涼介(『桃太郎』)

【3】 バレバレ

 
 3月28日、土曜日。京都市の天気は快晴。
 新郎・キヨトと、新婦・愛理(あいり)(旧姓・塩西(しおにし))、二人が開催する2次会の会場は、市内の先斗町(ぽんとちょう)にあるカフェ&ダイニングバー「フェアリー・テイル」。開場が午後5時半、開宴が午後6時となっている。
 開宴10分前に、会場のあるビル前で、ミツキたち3人は待ち合わせ。緊張して無口になっているミツキとアンズ、対照的にお喋りなツバサ。
 エレベーターで4階に上がり、店に入ると、そこには知らない顔ばかり。本当に、大学関係者は誰もいない。さっさと受付で会費を7千円支払う。
 定刻通りに、2次会がスタート。幹事による挨拶の後、新郎新婦が入場。はしゃぐツバサ、キヨトへ冷ややかな視線を送るミツキとアンズ。
 キヨトの簡単な挨拶、そして新婦の高校時代の友人による、乾杯の掛け声。
 壁に貼られているプログラムの紙によると、今夜の余興は全部で3つ予定されていた。
 最初は、新婦の職場関係者によるムービーが約10分。良く言えば「微笑ましい動画」、悪く言えば「内輪ネタ」だった。
 2番目の余興は、キヨトの高校時代の友人たちによる、某大型ダンス・グループを真似した集団パフォーマンス。彼らの暑苦しいテンションに、背を向け料理に集中するミツキとアンズ。でも、ツバサは彼らを見て「すごーい」を可愛く繰り返す。
 ダンスが終わり、3番目の余興、ミツキたちのコメント・ムービーがもうすぐ始まる。プロジェクターとノートPCが準備され、いつでも上映可能となる。
 ミツキの持参したDVD-Rを幹事に手渡す。ラベルには油性ペンで「完成版」の文字。
 ところが。
――そのディスクには映像データが何も保存されていなかった。何度PC画面上で確認しても、それは無い。
 顔面蒼白になりながら、ミツキは記憶をたどる。昼過ぎ、疲れと眠気でもうろうとしていながらも、ちゃんとデータを保存したはずだ。しかし、ミツキの出発する時間が大幅に遅れていたので、データ保存後、問題なく再生できるのかをその場で確認していない。
 とてつもなく大きなショックで、いつもならミツキへ文句の一つや二つを口にするアンズでさえ、言葉を失っていた。
 隣で、心配そうに見つめるツバサ。

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