小説

『クレームまんだら』鶴祥一郎(『耳なし芳一』)

「新しい法律?……ああ!あれか!えーと、消費者の保護がどうのこうのってやつ?」
「そうですよ。その消費者保護のための新しい法律で『指示と警告の不備は商品の欠陥である』って、決められちゃったんです。これはどういうことかって言うと、例えば……」
「お、具体例まで?」
「はい。今はやる気がないんで、いくらでも話しますよ」
「それはありがたい」
「で、具体例なんですけど、たとえばウチの商品で事故がおきました」
「はい」
「当然、顧客がクレームをつけてきます」
「はいはい」
「でも、話を聞いてみたら『ちょっとそれはありえないな』って使い方をしてるんですよ」
「まあ、そんなこともあるだろうな」
「そんなとき、大山さんなら何て言います?」
「うーん『まさかそんな使い方をするとは思わなかった』って言うかな」
「ハイそれ!そのひと言が、もう通じなくなっちゃったんです」
「は?」
「たとえウチがそう言っても『そんな使い方をしてはいけない、とは書いてなかった』って顧客に言い返されたら、やっぱりウチが謝らなくちゃいけないんですよ」
「ふーん、それが消費者の保護か?」
「はい」
 

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