小説

『寝太郎と私』平井玉(『三年寝太郎』)

「スーパーのレジのバイトしたら?パッキング能力が生かせるよ」
 寝太郎はまた声を出さずに笑った。腕から振動が伝わって、私は寝太郎を笑わせるのは結構心地よいことを発見した。
「それは魅力的な提案ですね」
 私のリュックはすかすかでバランスが悪いけど、寝太郎が入っているとプチプチビニールを詰めたように安定する。それもいい。まあ、しばらくは。明日の朝はナイススティックがあるからね、と言おうとしたら、寝太郎はもうひっそりと眠っていた。聞くのは初めてなのに、ずっと耳元にあったような寝息を聞きながら、私も眠った。

1 2 3 4 5 6 7 8 9