小説

『さがしもの』そらこい(『天の羽衣』)

 それから二人は、夕焼け小焼けのメロディーが流れるまで探し続けるが、ストラップは見つからなかった。
「もう、帰らなきゃいけないね」
 悲し気に呟いた羽衣に、海斗は、
「また明日も探そう! 二人で探せば絶対に見つかるよ!」
 と、励ますように言った。
「うん、そうだね。海斗くんありがとう」
「い、いいってこれくらい」
 羽衣の素直な感謝に、海斗は照れくさくなって頬をかいた。
「海斗くんまたね」
「羽衣ちゃんもまた明日」
 互いに手を振って別れの挨拶をする。
 沈みかけの太陽へと向かっていく彼女の背中に手を振り続けた。
 やがてその背中も見えなくなり、帰ろうかと思ったとき、
「あれ?」
 ジャングルジムの根元に白い何かが落ちているのに気が付く。
 そこはさっと見ただけで、ちゃんと調べるのはまた後日となった場所だ。
「もしかして!」
 海斗は急いで向かい、落ちていたものを拾い上げる。
「やっぱり! 羽衣ちゃんが落としたストラップだ!」
 少し土がついてしまっているが、羽衣の落とした白い猫のストラップで間違いないだろう。
 今なら走れば間に合うかもしれないと思い、すぐさま羽衣の後を追いかけようとしたところで、足が止まった。
 これを返したら羽衣はきっとすごく喜ぶが、二人きりの時間が終わってしまう。と思ったからだ。
 好きだけどそれを伝える勇気のない海斗にとって、今回の出来事はまさに願ってもないチャンスなのだ。
 今すぐに追いかけて渡すべきだとわかっていても、僕の足は羽衣ちゃんの家とは反対側にある自分の家の方へと向かっていた。

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