「明日買ってくる。他には?」
「適当に・・・任せる」
「わかった」
「ねぇ、本当にずっと、こうやって、やっていくつもりなの?」
「そうだよ」
「どうして?」
「そうしたいから」
「どうして?」
「どうしてって、こうじゃなきゃ、君と一緒にいられないだろ」
「その、どうして私である必要があるの?あなた、いつから、私を知ってたの?」
「生まれる前から」
それを聞いて、彼女は思わず眉をひそめた。
「生まれる、前?」
「昔俺だった男と、君だった人の夢を、ずっと見てきた」
「私・・・だった」
「ずっと前の君」
男は真顔でそう言った。ストーカーというものの妄想を目の当たりにして、彼女は予想していたよりもショックを受けた。
「どうして・・・どうして私って、わかるの?」
「目が開く前から、夢で君を見続けてきた。前に俺だった男の人生を、何度も何度も繰り返し見てた。その情景を刷り込まれながら、俺は生まれてきた。だから一目で君だとわかった」
続けられた言葉に、彼女は思考の中ですら絶句した。そしてその固まった表情を、男は想定内だというような目で見て、首を傾げた。
「みんな、見ているものだよ。君だって、生まれる前に夢を見てた筈。ただ、殆どの人が、生まれるときにはそれを忘れて、思い出すことなく、一生を終える。しなくてはならないことを覚えていられる人間は、それを果たせる人間は、そんなにいないってことなんだ」
「つまり・・・」呼吸を止めていたことに気づいて、彼女は息を吸った。「私を、閉じ込めるために、あなたは生きているってこと?」
「閉じ込めたい訳じゃない。言ってるだろ?一緒にいる為なんだ」
「なら、ただそう頼めばいいって、思わない?」