「今、ツイートしたとこだから」
あたしの返答に、そうですか、と言って女の子は俯いた。しばらく待つ。あたしはそろそろリプかDMが来ていないだろうか、と考えながら、彼女の次の行動を待った。彼女は、意を決したように顔を持ち上げて、提案をしてきた。
「私、神様に出会えたんです。良かったら、一緒にどうですか？」
彼女の言葉に、あたしの脳内に一気に感情と欲のワードが駆け巡る。
自慢、嫉妬、寂しさ、恐怖、不安、3P、羨ましい、確実、今日の夜、明日、あたたかい場所、後悔、嫉妬、嫉妬、嫉妬、嫉妬――。
あたしは隣で寒さか不安か分からないけれど、チワワみたいに震える女の子にハッと吐き捨て、笑った。
「神様に会うのははじめて？ 大丈夫だよ、お金だけくれる人とか、えっちなしの人とか、色んな人いるから。優しい人だといいね」
あたしの言葉に、女の子は小さく安堵の吐息を漏らす。固くなっていた表情が緩くなる。あたしはその産毛と眉毛がボーボーのスッピン面にキャンメイク様とマジョリカマジョルカ様で作った顔を近づけて言った。
「でも、腋毛とパンツからはみ出る陰毛の処理くらいはしておいた方がいいかもね。あと、コンドーム持ってないならどっかで買いなよ。せーりきてるでしょ、とっくに」
女の子の顔色がさっと青ざめる。表情豊かで、化粧を覚えたらきっと神様に好かれるだろう。女の子の背後に立った男が、あたしではない誰かの女の子の名前を呼ぶ。反射的に、女の子は振り向いて、恐る恐る頷いた。
神様は女の子を見た後、少しだけ肩を落としたが、寒いでしょ、行こうか、と言って女の子の手を取った。女の子の縋るような視線が頬にきたが、あたしは他人の振りをしてスマートフォンの画面を明るくして、Twitterを開く。
「あ、あの、あの、」
おしっこ漏らしてるんじゃないかって思うくらいに可哀想な震える声で、女の子は神様に言った。
「……コンビニ、寄りたいです」
神様は、彼女の言葉に、マツキヨ近くにあるから行こうか、と言っていて、あたしは吹き出しそうになるのをなんとか耐えた。足音が二つ、遠のいていく。
Twitterのホーム画面を見ると、DMが二件、リプライが五件きていた。十分でこれは、上出来だ。本当にスノー様には頭があがらない。
リプライは大丈夫？ やくるー？ や泊めますよ、なんて言う軽いジャブが並んでいる。初期アイコンや、プロフィールになにも書いてない人はとりあえず無視。今回のリプライは、全員はずれ。
DM欄を開き、来ているメッセージとアイコンを見る。直接DMを送ってくる人たちは、自分がどこに住んでいるか、住んでいる部屋の魅力などを伝えてくる。自力で来れるか、迎えに行った方がいいか、夕食はどうしたのか、持ち金はあるのか。個人情報の公開範囲があたしだけだから、事細かく聞いてくるし伝えてくる。そういう人は、信頼できる。
