小説

『ミスターブルーバードをさがして』村山あきら(『青い鳥』)

 「あなた達のような小さな子供が、こんな所で何をしているの?」
 輝くような金色の髪に青い目をした美しい姫君は澄んだ声で尋ねました。
「ミスターブルーバードを探していたんです。でも、お腹が空いて疲れてしまったので休んでいた所です」
「まぁ、それはかわいそうに」
 お姫様は大層、優しい心の持ち主だったので、直ぐに子供たちを自分の馬車に子供たちを自分のお城に招いてくれました。
 そして高貴な女性は自分がシンデレラだと名乗りました。
「あのガラスの靴の?」
「あのカボチャの馬車の?」
 目の前にいるお姫様はガラスの靴をはいていないし、カボチャの馬車にも乗っていなかったけれども、自分は確かにシンデレラだと言いました。
「それならきっと、お城に幸せの青い鳥がいるはずだわ」
 灰かぶりからお姫様になれたシンデレラが幸せではないわけがないのですから。
 けれどもシンデレラは悲しそうな顔をしただけで、頷きませんでした。
「そう思うならお城の中を探してみるといいわ」
 シンデレラの住むお城は馬車よりも、もっとずっと大きくて豪華で夢のような場所でした。姉弟はそこで温かいお風呂に入れてもらい、おいしいご馳走を食べさせてもらい、高価な服も着せてもらいました。
 だけど、どんなに探しても青い鳥は見つかりませんでした。
「どうしてミスターブルーバードはいないのかしら?」
 歩き回っている内に、子供たちは広々とした部屋に迷い込んでしまいました。大広間ではシンデレラとしかめっ面の大臣たちが何やら話をしているようです。
「シンデレラ様、明日の予定の件ですが…」
「殿下、来月のパーティーには青いドレスでご参加ください」
 皆に囲まれたお姫様は、とても居心地が悪そうでした。
 ようやく大臣たちがいなくなると、シンデレラは深い溜息をつきました。
「ここでは明日の予定も、着るものも自分では決めることが出来ないの」
「でも、こんなに素晴らしいお城に住めるじゃない」
「それに美味しいものも沢山、食べられるじゃない」
 千鶴たちには、どうしてお姫様が悲しそうな顔をするのかわかりません。
「何も持っていない灰かぶりの頃の方が、ずっと自由だった気がするわ」
 今のシンデレラはあまり幸せそうには見えません。ミスターブルーバードはここにはいないのだと、ようやく子供たちは気が付きました。

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