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『ツナガリタイ』室市雅則

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「めちゃ標準語やん。どこから来はったの?」
「横浜です」
「おしゃれやん」
 そんな風にして他愛もない世間話をし、何となく互いの距離が縮まりそうな気配がした頃、主宰の男性がやって来た。
「エリちゃん、飲んでる?」
「うん。今日はありがとう」
「繋がってる?」
「明日、ツナガリングやねん」
「ほんま。今がその時やんな。繋がる時や。頑張ってや」
 そう言って、男性は俺には目礼だけして、別の人の元へと歩いて行った。
「ツナガリングってなんですか?」
「そうやなあ。講習みたいなもんかな。それを受けるとステップアップできるねんな」
「ステップアップ。何がですか?」
「マーケティングをスプレッドするねん。それは自分のためでもあるけど、私はもっと知って欲しいねんな。私たちが扱っているもののさ」
 こ、これは……。
まずい所に来てしまった気がする。つまり、ネズミさんの繁殖場である。そう感じると、みんな目がキラキラしているけれど、ちょっとずれているような気もする。いや、彼らは彼らの正義でやっているのだし、ずれているというのではなくて、俺と合わないというだけであろう。
 俺はネズミさんと繋がりたくはない。
 そんな思いがすぐに伝播したのか、顔に出たのか、彼女は知り合いを見つけたようにして、『また』と言って去った。
 こうなりゃ、ネズミさんの餌にならぬようにして、飲むだけ飲んでやろう。こちとら会費を支払っているし、ビールはきちんと美味い。
 ドリンクカウンターに、こそこそと向かうとビールを受け取って、オカワリがしやすい位置に陣取った。
傍から彼らを見ると、みんな楽しそうにしている。
幸せって何だろう。自らがネズミになりつつも繋がっている彼らか、繋がりたいけれど、ネズミになれない俺か。
そんなことを考えていると、隣に気配を感じたので、そちらへと顔をやった。甘いので飲んだ気が全くしない低アルコール飲料のボトルを持ったか細い男性が立っていた。彼もこの会のお仲間なのだろうか。
「こんばんは。お隣良いですか?」
「どうぞ。すみません。注文だけ」
 そう言って、俺は黒ビールをゲットして、細い男性の元に戻った。
「すみません。お待たせしました」
「いえ、ビールお好きなんですか?」
「あ、まあそうです」

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