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『繋ぐ』平伊志七

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 そういうわけで、「繋いでもらう」つもりだけれども、いったん保留にして、私はおじいちゃんとおばあちゃんの家を後にした。
 帰ってから、リアルタイム検索だとか#だとか、色々な方法で繋ぐシステムについて検索してみたけれど、ちっとも検索にひっかかってこなかった。徹底しているようだ。このご時世になかなかやるな。まあ、繋げなくなったら終わり、同様、ネット上にこのことが出たら終わりにするとも言われているらしいので、利用した人も言いふらさないのかもしれない。
 とは言え、一度利用したら二度と使えないそうなので、たとえ繋ぐシステムが終了しても、別に自分にはもう関係ないとか思わないのかなあ。意外と律儀な人々がこれまでこのシステムを繋いできたってことだろうか。
まあ、逆にネット上でこのシステムを暴露した場合、このシステムを終わらせた利己的な人間だ、なんて特定されて、自分がネットの餌食になる可能性もおおいにある気がする。繋ぐシステムを知らなかった人も、ネットで後から知って、もしかしたら自分にもチャンスが回ってきたかも知れないのに、一人の勝手な行動でこのシステムは終わってしまった、とか言い出しそうだし、さんざん叩かれて炎上してしまうかも。
 怖い怖い。こういう想像力が抑止力になっているのかも知れない。
 それにしても、誰と行こうか。宿泊人数は必ず二人、だそうだし。
 私の失恋を慰める旅行に付き合ってくれたのは、大学の友達、四人。この中から一人だけを選ぶとなると絶対に、角が立つ。
 バイト先の、友達か、先輩?いや、二週間先のシフトはもう決まってるし、急に誘うわけにはいかないな。私はたまたま二週間後の水曜も木曜も入ってないけど。これはもう、まさに大学の講義は何とかして行ってこいってことに違いない。週三のバイトの曜日は不定期だ。意図せずその週の水曜日と木曜日が空いてるなんて。
 ベッドに寝転んでスマホの電話帳の名前を確認しながら、この子でもない、あの子でもない、と思案する。
 高校時代の友達もグループで行動することが多かったし、その中の誰か一人だけってなると、一番仲が良かった亜衣だろうけど、亜衣を誘って麻友には内緒っていうのも知られたとき微妙だしなあ。他の四,五人はいいとしても、亜衣と麻友に差をつけていると思われるのは、嫌かもしれない。
 こうやって考えると、私、特別に特別な一人っていないんじゃないかって気がしてくる。大好きな友達はいるし、特に嫌な思いもせずにみんなの中にいるけど、一人だけ特別な友達・・・・・・、いや、一人と深く仲良くだけが正解ってわけでもないだろうけれど。
 交友関係だって、浅く広くっていうほど、浅くも広くもないし。
 仲のいい「みんな」と過ごすのが好きなのか、私。なるほど。思いがけず自分を見つめる機会になった、ってことにしておこう。
で、結局どうしようかな。誰と行こう。
 そうこうしているうちに、電話帳のなまえは「や」まで来てしまった。
「吉田香奈・・・・・・」
 誰を誘おうか、と考え始めたときには全くもって思い浮かばなかった人物で、私は手を止めた。そもそも今、どんな顔をしているのかも知らない子だ。
 小学校六年生のときに転校していった子。いまだに年賀状のやり取りはしているけれど、そこに書かれていたメールアドレスと携帯電話の番号をこうやってスマホに登録はしているけれどそれで連絡を取ったことはない相手。年賀状に、いつも「また会いたいね」って書いてるけど、実行したことは、彼女の転校以来一度も無い子。
「香奈ちゃん・・・・・・」

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