私が読み終えると、子ども達は一斉に拍手をした。「リリちゃんよかったね」「みんなもリリちゃんのこと大好きなんだね」なんて、みんな思い思いの感想をもってくれたみたいだ。
「おねえさんすごい! きれいな声!」
私に読んでほしいと言ってきた子は、物語の内容よりも私の語り口に感想をもってくれたらしい。瞳がキラキラと輝いている。
「本当? うれしいな」
子どもはかわいい。心からの言葉だってことが伝わってくる。いつから人は気持ちとは裏腹の言葉をつかえるようになってしまうのだろうか。
森の仲間達はリリちゃんのことが大好きだった。だからリリちゃんが倒れたときにあんなにもパニックになった。そしてリリちゃんも気がついた。無理なんかしなくてもいいことに。無理して「手伝うよ」なんて言わなくてもいいことに。そんなことをしなくてもみんなリリちゃんのことが大好きなんだということに。
私はどうだ。私が倒れたところであの人達は気がついてくれるのだろうか。もう私は無理をしないて済むようになるのだろうか。いや、きっと次の人を見つけるだけだ。私なんて放っておかれるだけだ。
「おねえさんどうしたの?」
いつの間にか子どもに下から覗き込まれていた。おおきな瞳に心配の色が浮かんでいる。
「あ、え? ほ、本当だ。どうしたんだろう」
さっきあれほど堪えていたのに、涙が頬を伝っていた。
「おねえさんお腹空いてるの? おばあちゃん! 干し柿ちょうだい!」
「私クッキー持ってるよ! あげる!」
「はい! ハンカチ!」
「あ、のどかわいた? お茶持ってくる!」
心配した子ども達が次々に私に色々な物を渡してくれた。まるでさっきのリリちゃんにお見舞い品を持ってくる森の仲間達のようだ。
子ども達はみんなで心配そうに私を見つめている。早く涙を止めようとしたのにそれはなかなか止まってくれなかった。
「図書館で色々やってくれたんですね。みなみさんが話してくれました。ありがとうございます」
夕食の時間、梨沙さんは配膳をしながら私にそう話しかけてきた。
あの干し柿を持ってきてくれた女性はみなみさんというのか。そういえばあの女の子の名前も聞いていない。タイミング的には最初に聞いておけばよかったのだろうが、どうせ今日だけの付き合いだしと思い聞いておかなかった。でもあの人達とはこれっきりにしたくない。
「い、いえ。わたしも楽しかったですし。あの、それで聞きたいことがあるんですけど」
「何でしょうか」
「今日図書館に来ていた、赤いリボンで髪を二つにくくってた子分かります? 水色のパーカーにグレーのスカートの……」
「それなら……多分凛(りん)ちゃんだとは思いますが……」
「絵本読んでって言ってきた子なんですが」
「あ、じゃあ凛ちゃんですね! さっき私にも言いに来てくれたんです。おねえさんが自分がお願いした絵本を読んでくれたって」
「あ、本当ですか?」
「あの、それで」
ここで梨沙さんは声をおとす。
「今日の夜八時頃とかって時間あります?」
「八時? 特に予定ないですけど」