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『私の旅は』小山ラム子

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「本? はい、よく読みます」
「よかった。うちのペンションの隣に古い蔵があるんですけど、つい最近図書館にしたんです」
「図書館に? すごいですね」
「小さなものですけどね。地域の人達はもちろん、ペンションに来てくれた人達もつなぐ場所になればいいなと思って。だから図書館っていってもお茶飲むとこもあったりおしゃべりするとこもあるんですよ。みんな仲良く話してますよ!」
「そ、そうですか」
 及び腰になった私に梨沙さんは慌てて「無理強いはしませんよ! ただ本持っていって部屋で読んでもらってもいいし!」と付け足した。
「加奈子さんはゆっくりしに来たんですもんね。すみません」
「いえ。面白そうだしちょっと顔だしてみます」
「はい! ぜひ!」
 気がついたらずいぶんと山を登っているようだった。開けた場所にでる。なんと気持ちのいい秋晴れだろうか。まとまった洗濯をするためだけに晴れを願っていた自分が、昨日は久し振りに旅行のために晴れを願った。それは聞き入れてもらったようだ。
「ここの部屋どうぞ!」
「ありがとうございます」
 案内された部屋は洋室だった。六畳くらいだろうか。掃除が行き届いておりとてもきれいだ。玄関で歓迎してくれたご主人と奥様もとても素敵な方達だった。梨沙さんも含め、このペンションの人達の人柄が反映されているような部屋だ。
「六時の夕飯のときにはリビングに来てくださいね。私はその辺にいますので何かあったら遠慮なく声をかけてください」
「はい。ありがとうございます」
 梨沙さんに頭を下げる。私より年下であるだろうに、なんてしっかりした子なのだろうか。ああ、こういう子が後輩にほしかった。
「加奈子さんってすごいですよね」
「はい?」
「私にこんなに丁寧に接してくれて」
「え? だって梨沙さんがすごく丁寧な人だから……」
「そうですか? 割と大雑把って言われるんですけどね。でもうれしい」
 梨沙さんは本当にうれしそうに笑った。何でだろう。その笑顔に目頭が熱くなっていた。
 例の図書館は、梨沙さんが言っていたように図書館らしかぬ賑わいを見せていた。恐る恐る中を覗き込んでみる。失礼ながらこんな田舎の山にこれほど子どもがいるなんて、と思うほど中には子ども達がいた。
「こんにちは」
 突然後ろから声をかけられる。振り返ると、ニコニコとした七十代くらいの女性がいた。両手に荷物を抱えている。
「こんにちは。あ、持ちますよ」
 思わず荷物を持ち上げると、女性は「ありがとねえ」と言いながらさらに表情をやわらかくした。中に入ると、女性を見た子ども達が集まってくる。
「おばあちゃん! 今日のおやつなに?」

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