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『ファンタスティック逃避行』山科晃一

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 と横から余計なことを言うのは、やはりあの男で、いつの間にか私の隣に立っている。和田。そう和田という男は私が手にしていたコウモリ型の鍵に視線を移す。
「3 階かあ。俺、405。一階違いっすね」
 私は特段返事もせず、鍵をポケット隠した。
「皆様に注意事項があります。アプリのダウンロードはお済みでしょうか?」
 魔女はタブレットを取り出して、客に見せると、タブレットの画面が正面のどでかいモニターに映し出された。
 私は、思わずポケットに手を突っ込んだが、勿論、目的のものはない。
「ダウンロードがまだの方は、すぐにできますので今ダウンロードしてください」
 仕方ない。受付に相談しにいこうと一歩踏み出したところ和田がスマートフォンの画面を私の目の前に見せつけてきた。そこには、ドン・ウルフの 2Dキャラクターが微笑みを浮かべていた。
「これちょーかわいい。触れたら、顔変わるんですよ」
「へえ」
「あれ、良子さん、やらないんすか」
「いやあ、ちょっと」
「まさかまたスマフォ置いてきたんすか。チラシにも必須だって書いてあったのに」
「……そう、だよね、だから今からフロントに」
「じゃあ、俺と一緒にやりません?」
「へ?」
「俺と一緒に行動すればいいんじゃないっすか?」
 こいつは何を言っているんだろう。こんなやつと一緒に夜を過ごすなんてありえない。
「いやそれは」と言いかけ、
「もし、アプリがダウンロードできないなどお困りの方は手を挙げてください」
 という魔女の一言に藁をもすがる思いで手を挙げた。魔女がそそくさとこちらに走って来て事情を伝えると、「じゃあ、大丈夫です。貸出用のものがありますので」と手配してくれた。和田は「良かったっすね」と何故か少し残念そうに呟いた。
「お手元のアプリ画面をご覧下さい。今夜、皆さんの元に当支配人のドン・ウルフからミッションが伝えられます。お子様連れの方は、お子様と離れずチャレンジするようにしてください。なお、未成年の方は午後十時までのご参加となりますので、お時間になりましたら係員の案内に従って七階のホールまでお上がりください。また、左下の吹き替えボタンを押すと、英語、韓国語、中国語の吹き替えに変換することも可能となっております。非常事態が発生した場合や、途中でミッションを断念する場合は、アプリ右上の脱出ボタンをワンタップして頂くとフロントの方に電話がつながるようになっていますので、ご利用ください。なお、非常階段の位置はそれぞれの階のエレベーターを降りてすぐ右の所に―」
「いやあ、ここでバイトして二年になるんすけど、こんなことってあるんですね」
「なに?」
 魔女のアナウンスに聞き入っていた私の集中を妨害するように和田は言った。
「あれ、僕のおふくろなんすよ」
和田の目線の先には中年夫婦の後ろ姿があった。女性の方は赤いリボンで長い髪を一つに括っている。
「応募者名簿見て驚きましたよ。俺が六歳の頃に出て行ったおふくろの名前があったんです。俺の顔なんて覚えてやしないでしょうけどね」
「だから参加したってわけ?」

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