東北だ。そうだ、折角お客様がいるんだから直接お客様に聞いてもいい。
「あの、ちょっとお聞きしてもいいですか?」
「何?」
「東北っていうと代表的な物は何ですか?」
「え~、代表的な物?何で?」
「あの、実は日本の八つの地方の名前が付いたカクテルを作る事になりまして。何にしようかものすごく迷ってます。」
「へえ~、それで東北ね。」
「はい。」
「まぁ、すぐ浮かぶのは牛タンかな。でも、それは宮城だもんね。食べ物でなくてもいいの?」
「はい。」
「ん~、伊達政宗。これも宮城か・・・範囲が広いなぁ。」
眉間に皺を寄せて男性は考え出す。
「すみません、余計な事を言っちゃって。」
「ううん、こういうの考えるの面白いよ。」
「ありがとうございます。」
そこから自分と男性客はあれやこれやと話し合った。ちなみに男性は『井上さん』という名前。
どれくらいの時間がたっただろうか、ジンやウォッカ、それにラム、ウイスキー、ワイン、ディタ、カシス、様々な種類のお酒を使って試作品を作った
そして、なんとなく『東北』が出来上がって来た。
ヨーグルトのリキュール45ml、ソーダUP、そしてカットレモン。
少しシンプルな気もするが、東北と言えばやはり『雪』だ。
「いいんじゃない。飲みやすくて美味しいよ。」
「ありがとうございます。」
ひとまずこれで行こうとなった。しかし井上さんには試作のドリンクを結構飲んでもらっていた。
「色々すみません。助かりました。」
「全然。お酒好きだし。ねぇ、明日も考えるんでしょ?」
「はい、あと四つです。」
「来ていい?また考えようよ。」
「え、構いませんけど。」
「じゃあ決まり。そろそろ部屋に戻ろうかな。」
そう言って立ち上がる。
「ありがとうございます。それでは明日お待ちしています。」
井上さんは清算を済ませて部屋へと帰って行った。
そして次の日は立花君も出勤していたので、三人で考える事になった。始めに取りかかったのは『中部地方』。
新潟、長野、山梨、静岡、愛知、岐阜、福井、石川が中部地方だ。
「え、新潟って中部なの?」
と、中部地方の確認をした時に井上さんが指摘してきた。実はそこは悩んだ所だ。
「僕もそう思ったんですけど、なんだか色々言われているみたいです。北陸だったり、甲信越だったりと人によって変わるんで、『八地方』を基本として作って行こうかと。なのでこの分け方で行きます。」
「そう、じゃあとりあえずそういう事にして『中部』を考えようか。何がある?」
「お茶?」
と立花君が提案。
「いや、それは静岡だけでしょ。」
と井上さんが突っ込む。
「じゃあ白川郷。」
「それは岐阜。」
「千枚田。」