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『なんか』室市雅則

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 振り返るとゲップをする沼田がいた。
 おでん二人前、酒二合をこの短時間に平らげるとはどんな胃袋しているんだよ。
「蓮見殿もシメの炭水化物ですか?」
「そうだよ」
「僕もカレーが大好物であります」
 沼田が敬礼をした。それを見ていた俺の前で並ぶカップルが笑った。去りたい。しかし、ここまで並んで食べずに帰るのも業腹だから俺は沼田と一緒に並び続けた。
「お二人様、どうぞ」
 残念ながら店員さんにも二人組と認識されたようだった。
 沼田と並んでカウンターに座り注文をする。
「Lセットを」
 二人でハモってしまった。あれだけ食べて、沼田もLを食べることに驚いた。
「蓮見殿はまだ飲めるでござるか?」
「まあ」
「ビールもお願いします」
 瓶ビールとグラスが二つ先にやって来て、沼田がそれぞれに注いだ。
「乾杯」
 沼田がグラスを掲げた。この状況で無視することは出来なかったので、俺はグラスを合わせた。
 カレーを調理しているのは、この道一筋って感じのひょろっとしたおじさん。おじさんが調理補助のおばさんに『カツもう揚がってる』と小声で伝えていて、職人気質のようで頼もしかった。
 カツと千切りキャベツが銀の皿に盛られたカレーが俺と沼田の前に供された。
 二人揃って『頂きます』とハモって食べた。これが美味しかった。そして、ビールにも合った。
 もりもりと食は進んでほぼ同時に食べ終わり、不本意ながら二人揃って店を出た。
「蓮見殿、これからどうするでござるか?」
「ああ、今日は疲れたからホテルに帰るよ」
「左様でござるか」
「じゃあ、先行くわ」
 どこか沼田は寂しげだったが、俺には関係がないから、俺は先にホテルへと歩みを進め、沼田とカレー屋の前で別れた。

 部屋に帰っても沼田とまた顔を合わせることになる。それも何だか色気がない。繁華街を歩いていると綺麗なお姉さんがたくさんいる。しかし、俺はその手の店に全く慣れていない。悩みながら歩みを進めているとキャッチの男に声をかけられた。
 でもやっぱり怖いから、無視をすると『しけたツラしやがって』と言われた。
「は?」
 俺は立ち止まり、そのキャッチの男に正対した。するとあっという間に男の仲間たちに囲まれた。男たちはニヤついている。
「『は?』って何?」
 もう面倒くさい。頭を下げて済むなら、それで良い。
「すみませんでした」
「土下座しろよ」
 程度が低い奴らだ。だが、もう面倒くさい。俺はアスファルトに膝をつけた。この時期だから冷気が膝に伝わる。手をつこうとした時、奇声が響き、俺を囲んでいた男たちの間から、コンビニの袋をぶん回した沼田が飛び込んできた。

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