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『なんか』室市雅則

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 「なんか違うの」
 そう言われて彼女に振られた。
 『なんか』が『何か』は明示されなかったから、その正体は皆目見当がつかない。彼女に対しての未練はあったが、往生際の悪い男と思われたくなかったので、一体それが何であるかを尋ねることはできなかった。
 だが、気になる。
 この先、女性と交際をすることもあるだろう。その際に同じ轍を踏みたくない。だから、マイナスとなり得る『なんか』というのを自分で発見しなくてはいけないと思う。自身を見つめる。そう考えると一人旅に向かうことに思い至った。そして、一人旅といえば、空気がぴりっとした日本海側が似合うし、せっかくなら美味しい魚とお酒がある土地が良い。
 金沢に行ってみよう。
 季節もちょうど良い頃だし、思索に耽れば、傷ついた心も癒されるだろう。

 そうやって金沢に到着した。遠いだろうなと思っていたが、新幹線はあっという間の快適で、彼女と来ていたら、移動時間はもっと早く感じたかもしれない。
 いかんぞ。
 そうやって振られた女性とのたらればを想像するのは。
 駅前の巨大な木の柱が組み合わされた立派な門の脇で、深呼吸をすると冬が溶けたみたいな空気が肺に入って気持ち良かった。
 ひとまず荷物を預けるためにホテルへ向かった。乗ったバスの車窓から眺める街並みは、適度に活気があって、大都会のようにゴミゴミした様子もない。この時点でこの旅の正解を確証した。
『武蔵ヶ辻・近江町市場』のバス停を降りてすぐのホテルで二泊お世話になる。綺麗でモダンな建物だ。モダンと発音するとモダン焼きが食べたくなる。そう言えば、あの子は大阪出身だったから、作ってくれたお好み焼きがとても美味しかった。
こら、いかんぞ。
 フロントで荷物をお願いすると、快く引き受けてくれた。ありがたい。まだ部屋は見ていないが、これは期待が膨らむ。大浴場もあるらしいし、身も心も癒して、未来への活力を養うのだ。

 荷物を預けた足で市場を巡って、種々の海の幸に目移りをさせ、ボリューム満点の回転寿司を頬張り、金沢21世紀美術館のアートで自身の琴線を刺激し、歩きながらメロンパンアイスを食べて甘いひと時を過ごした。結構いい感じに過ごし、『なんか』に近付いたような気がするし、傷心も癒えつつあるような気がする。ただ、観光シーズンのため、どこもかしこも人だらけで、感傷に浸るというムードではないのが少し残念だ。
 とりあえず、ホテルに戻って一風呂浴び、一眠りして夜に備えよう。

 ホテルにチェックインをし、預かって貰っていた荷物と鍵を受け取った。部屋の番号は『703』。『703』は『なおみ』と読める。彼女の名前だ。なおみちゃん。今頃、何をしているのだろうか。

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