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『なんか』室市雅則

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 いかん、いかん。
 部屋を開けた。
 白いパンツ一丁の小太りの男が立っていた。
 思わず扉を閉めて、部屋番号と鍵に書かれた番号を確かめる。
『703』
 合っている。
 もう一度、扉を開けた。
 白いパンツ一丁の小太りの男と目があった。
 扉を閉めて、フロントに戻った。
「すみません。部屋、間違えているみたいです」
「え、少々お待ち下さい」
 フロントマンはPCを確認した。
「蓮見様のお部屋は……。『703』で間違えがないようですが」
「一緒に来て貰えますか?」
「はい」
 フロントマンと一緒に『703』に向い、扉を開けると誰もいない。先程は、見間違えだったのかと目を擦っているとユニットバスから裸の小太りの男が出てきた。
「うわっ!」
 小太りの男が叫んだ。

「申し訳ございません」
 支配人がやって来て俺たちに謝った。
 ホテル側の手違いやすれ違いがあり、部屋をダブルブッキングしてしまったようだ。ならば、後から入って来た俺が他の部屋に移動すれば良いだけだ。
「それが私どもは本日満室でして、近隣の宿泊施設にも問い合わせをしたのですが、どこもかしこも満室のようで」
 絶句した。ここまでやって来て宿無しなんて困る。しかし、フェアに考えると小太りの男が出て行っても良いわけだぞと思いつくと、タオル腰に巻いている小太りの男が口を開いた。
「私は構いません」
 俺が思わず返答をした。
「何がですか?」
「いや、同じ部屋でも。これも何かの縁。男同士気兼ねなくいきましょうよ」
 小太りの男が俺の肩に手を回した。拭きが甘いから少し湿った手であったので、反射的に手をどかした。こんな男と同室なんて嫌だ。しかも、ベッドは一つだぞ。
「え、よろしいのですか? 沼田様」
 おいおい、支配人まで何を言うんだよ。
「ええ」
 沼田が胸を張ってこちらを見た。支配人もこちらを見た。二人の視線は『イエス』の回答以外は予定していない期待に満ちている。頷くしかない雰囲気。
 俺は頷いた。
「なお、明日もよろしいでしょうか?」
 支配人がここぞとばかりに畳み掛けて来た。
 マジかよ。
 沼田が頷いた。俺もここで首を横に振っては負けた気がするので頷いた。

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