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『なんか』室市雅則

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「どうも、沼田でござる」
 ござる? 聞き間違えか。
 沼田は俺に手を差し出して来た。支配人はもう問題は解決したと捉え、『703』から去っている。
「どうも、蓮見です」
 俺は手を差し出さずにソファに腰掛けて一息ついた。
「モコフレですかな?」
「モコフレ?」
 沼田はスマホでアイドルの曲を流し、それに合わせて踊った。俺は唖然と見ていることしかできなかった。踊り終わった沼田は息を切らせながらコーラを取り出して飲むと、盛大にゲップをした。勘弁してくれ。
「モコモコメイツのライブに来たフレンズなのでは?」
「違います」
「では、何をされに?」
 うるせーよ。沼田。
「観光です」
「私は本日の参戦、いや、ライブ観賞は終わりましたが、明日も参戦するので楽しみなのであります」
 何だよ、その話し方。
「へえ」
「蓮見殿はクールですな。あ、僕は沼氏でも沼ちゃんでも結構でありますよ」
 『蓮見殿』と呼ばれたことを俺は無視をして、スマホを取り出し、晩飯の店を探すことにした。
「蓮見殿、夕餉はどちらへ?」
 変な言葉遣いするなよ。イラつく。
「適当に行きます」
「でしたら、ご一緒しませぬか?」
「いや、一人で食べたいんで」
 速攻で拒否をした。
「蓮見殿、見て下され」
 俺が顔を上げると、沼田がデカデカと『モコモコメイツ』とプリントされたTシャツを見せつけていた。
「良いでしょ?」
こんな奴と一緒に歩けるか。少し晩飯には早いけれど出よう。俺はショルダーバックを持って部屋を出た。
「つれないでござるなぁ」
 沼田の声が背中に届いた。

 金沢はおでんが有名と聞いていたので、ホテルから少し歩いておでん居酒屋に入った。まだ早い時間のせいか、店内はあまり混雑していない。中に入ると厨房を囲んだカウンターに通された。様々な種のおでんが大きな鍋でひしめき合っている。どれも美味そうだ。
 ビールと大根、車麩、たまご、がんも、カニ面、そして、大好きなポテトサラダを頼んだ。そう言えば、彼女が作ってくれたポテサラはアンチョビが入っていて……。
いかんぞ。
 ビールと同時におでんとポテサラが運ばれて来た。
 ビールで喉を潤して、まずは大根を食べた。美味い。身体だけでなく、じんわりと心まで温まりそうだ。これは日本酒だろと思い至り、ビールはポテサラでやっつけ、地酒を一合頼んだ。
 日本酒が届くまで我慢が出来ず、他のおでんに手をつけてしまったので、地酒がやって来たと同時に、おでんもいくつか追加注文をした。
 やはりおでんに日本酒の組み合わせは最高だった。ここに来て良かった。同部屋の沼田があれだけど、気分が良くなって来た。
「いらっしゃいませ」

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