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『オレンジと絵』乃木棗

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 数か月後、美咲は東京でいつものように忙しい日々を過ごしていた。あのオレンジの思い出を思い起こす時間も、短くなってきており、日々を過ごすので精一杯という感じである。そんな時、美咲のスマホにある写真が送られてきた。そのメッセージに気が付くのは、ほっと息を付ける夜九時を過ぎる頃だった。
「あ……」
 そこには、「完成しました」という文字と、オレンジの印象的な一枚の絵画の写真がある。そのオレンジの光のようなものを見ている女の後姿は、彼女であろう。
 美咲は、すぐにそのメッセージに返信をした。
『わあ、すごいです』
 そうして、その返信にはすぐに返事が来た。
『あの時、美咲さんと会うことが出来たから描くことが出来た絵です』
『この絵が、ホテルに飾られるんですね』
『ええ、なんだか自分の手元からいなくなってしまうのは寂しい思いもしますが。でも、ホテルの方にも喜んでいただけて、良かったです』
『自分の絵がみんなの目に見えるところに飾られるなんて、やっぱりすごいです』
『そうですね、美咲さんも時間があればぜひ見に来てください』
『はい、いつか必ず』
 そこで、メッセージは切れた。美咲は、ちょうど冷蔵庫の中にあったオレンジジュースをコップに注ぐと、それを一気に飲む。そうして、今日という一日を終えた。

「やっぱり、すごい」
 初めてこの土地に足を踏み入れたときから約一年後、美咲はあのホテルのロビーの椅子に座っていた。その目の前には、あのオレンジ色が印象的な絵が一枚飾られてあり、それはこのホテルの雰囲気をより一層あたたかいものにしている。
「お久しぶりです」
 絵を見ている美咲の後ろから、そう声を掛けたのは紛れもなく春樹だった。
「春樹さん、お久しぶりです」
「元気に過ごしていましたか?」
「ええ、春樹さんは?」
「僕も相変わらず絵に没頭している毎日です」
「ふふっ、そうなんですね」
「今日は、どこに行かれる予定ですか?」
「あの時のオレンジ畑にまた行きたいなと」
「それなら、僕が案内しますよ」
「ありがとうございます」
 二人は、あの時と同じようにバスに乗り住宅街を歩いて坂の手前まで来た。
「腕、貸しましょうか?」
「いいですか?」
 美咲は、春樹の腕を掴む。
「重くないですか?」
「いいえ、全然」
「よかったです」
 そうして、あの急な坂を二人で登り切る。そうして見えた景色は、一年前に見たあの風景と同じだった。
「実は」
「はい」
「僕、来年から東京の美大で勤めることになったんです」
「わあ、すごいですね」
「あの絵のおかげなんですよ。美咲さんのおかげです」
「それはよかった」
「それで……」

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